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DevOpsでの継続的テスト:戦略から実践までの総合ガイド

Hannah Son著

アジャイル手法も含めたDevOpsは開発の合理化に役立ちますが、真のゲームチェンジャーは継続的テスト(CT)です。DevOpsにおけるCTとは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体にわたって自動的にテストを実行し、各ステージで品質と機能性を確保するというプラクティスです。つまり、テストは1つの最終チェックポイントではありません。迅速にフィードバックを返し、問題を早期に捕捉するのに役立つ継続的なプロセスです。

DevOpsにおける継続的テストとは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体にわたって自動的にテストを実行し、各ステージで品質と機能性を確保するというプラクティスです。 

継続的テストが重要な理由

CTは単なるバズワードではありません。現代のソフトウェア開発の切り離せない一部です。開発ライフサイクル全体にテストを統合することで、欠陥を早期に検出して修正し、コストの高い運用環境での問題修正というリスクを軽減します。このような予防的アプローチは、今日の市場が要求するスピードで高品質のソフトウェアを維持し、デリバリーするには不可欠です。

継続的テストと従来のテストの違い

継続的テストは、典型的なテスト手法とは異なります。次の表は、従来のテストと比較した継続的テストの違いです。

側面継続的テスト従来のテスト
タイミングと頻度コード変更のたびに継続的に実施開発完了後に別個のフェーズとして実施
自動化自動化を多用自動化される場合もあるが、それほど広範囲ではない
フィードバックループ開発者に迅速なフィードバックを提供プロセス終了後にフィードバックが行われることが多い
DevOpsとの統合DevOpsワークフローと一体化DevOpsにうまく統合できない場合がある
スピードと効率スピードと効率を重視した設計特に手動テストがある場合は比較的低速な可能性がある
リスク軽減問題を早期に捕捉サイクルの後期まで問題が見逃される可能性がある
カルチャーとコラボレーションチームワークと共同責任を推進サイロ化されている場合がある

DevOpsにおける継続的テストの役割

継続的テストはDevOpsパイプラインの品質ゲートキーパーです。コードが開発、統合、デプロイメント、運用と段階を進むごとにソフトウェアの品質と機能を確認します。以下は継続的テストがもたらす変化です。

DevOpsにおける継続的テストの利点

DevOpsパイプラインに継続的テストを統合することには多くの利点があります。

DevOpsパイプラインに継続的テストを実装する方法

DevOpsパイプラインに合った継続的テスト戦略を適切に実装するには、次の手順に従います。

1.テストの目標を明確に定義する

開発プロセスの各ステージで行うテストの目標を具体的に設定します。これには、テストタイプ(単体テスト、機能テスト、パフォーマンステスト、セキュリティテストなど)や達成すべき品質条件を特定する作業が含まれます。明確な目標は、プロジェクトの全体的な目標とテスト作業の整合性を取るのに役立ちます。

テストの目標の例:

2.適切なテストツールを選択する

通常、パイプラインにはさまざまな処理ステージをサポートするさまざまなツールが必要です。次のリストは検討するべきツールをまとめたものです。

ツールカテゴリツール名説明
バージョン管理システム(VCS)Gitソースコードを管理するための分散型バージョン管理システム
Subversion (SVN)ソースコードを管理するための中央管理型バージョン管理システム。
継続的インテグレーション(CI)ツールJenkinsコードのビルドおよびテストのためのオープンソースの自動化サーバー
Travis CI自動テストに利用されるGitHubと連携するホスト型CIサービス
ビルドツールMaven主にJavaプロジェクトで使用されるビルド自動化ツール
Gradleパフォーマンスを重視したオープンソースのビルド自動化ツール
テスト管理ツールTestRailCI/CDツールと統合可能な総合的テストケース管理ツール
機能テスト自動化ツールSeleniumWebブラウザーを自動化するためのツールスイート
Ranorexさまざまなアプリケーションに対応したGUIテスト自動化フレームワーク
デプロイメントツールJenkins継続的デプロイメントにも利用される。デプロイメントプロセスを自動化
Ansible構成管理およびデプロイメントのためのオープンソースの自動化ツール
Kubernetesコンテナー化されたアプリケーションのデプロイメント、スケーリング、管理を自動化するためのシステム
モニタリングツールNewRelicアプリケーションのパフォーマンスモニタリングおよび管理ツール
Data DogITおよびDevOps向けモニタリングおよび解析プラットフォーム
テスト環境Docker 一貫したテスト環境を実現するためにコンテナー化プラットフォーム
AWS (Amazon Web Services)スケーラブルなテスト環境を実現するためのクラウド基盤

3.CI/CDパイプラインにテスト自動化を統合する

アジャイルチームは、既存の機能を継続的に検証しながら、スプリントごとに新規機能をテストする必要があります。そのため大規模なレグレッションテストが必要になりますが、これを自動化することで効率的に処理できます。CI/CDパイプラインにテスト自動化を統合するには、以下を行います。

画像: TestRailの幅広いAPIを使用して自動テストを簡単に統合し、テスト結果を登録したり、APIによってアプリケーションのさまざまな側面を自動化します。

継続的インテグレーション(CI)および継続的デプロイメント(CD)はDevOpsパイプラインの重要なコンポーネントであり、継続的テストはこの両方と緊密に統合します。CIは開発の全段階を通してソフトウェアが安定し、一貫性があることを保証し、開発サイクルの加速とソフトウェア品質の向上につながります。

DevOpsパイプラインでCIを実装するための10のステップ

  1. CIツールの選択: JenkinsやTravis CIなど、プロジェクトに合ったCIツールを選択します。
  2. CIサーバーのセットアップ: 専用のサーバーまたはクラウドプラットフォームにCIツールをインストールし、構成します。
  3. ビルドスクリプトの作成: アプリケーションのビルド方法を指定したスクリプトを作成します。
  4. テストの自動化: 変更を検証するための自動テストをスクリプトに含めます。
  5. CIパイプラインの定義: コードをビルドし、テストするための一連のアクション(パイプライン)を作成します。
  6. VCSへの接続: バージョン管理システムでコード変更時にCIをトリガーするフックを設定します。
  7. モニタリングおよびレポート: CIビルドおよびテスト結果を追跡するためのモニタリングをセットアップします。
  8. 並行化: フィードバックを加速するため、テストを同時実行することを検討します。
  9. フィードバックおよび通知: ビルドおよびテストの結果の通知を設定します。
  10. 繰り返しと最適化: フィードバックとパフォーマンスメトリクスに基づいて継続的にCIプロセスを改善します。

CDは人間の介入を最小限にすることでリリースプロセスの合理化と加速を実現し、ソフトウェアを常にデプロイ可能な状態にすることを目標とします。このアプローチにより、高いソフトウェア品質を保ち、コードの変更から運用へのデプロイメントまでの時間を短縮しながら、新機能やアップデートを迅速に安定してエンドユーザーに届けることが可能になります。

DevOpsパイプラインでCDを実装するための10のステップ

  1. CIプロセスの拡張: CIプロセスを基盤として、コミットのたびにコードが自動的にビルドされ、テストされるようにします。
  2. デプロイメントステージの定義: 自動的にデプロイする環境(ステージング環境、運用環境など)を指定し、必要に応じて別個のCDパイプラインを作成します。
  3. バージョン管理および成果物管理: コードについてはバージョン管理システム(Gitなど)を使用し、Dockerイメージなどのデプロイ可能な成果物については成果物リポジトリ(Docker HubJfrog Artifactoryなど)を使用します。
  4. デプロイメントスクリプトの自動化: デプロイメントスクリプトまたは構成ファイルを作成し、各環境にどのようにアプリケーションをデプロイするかを定義します。
  5. オーケストレーション: Kubernetes、AnsibleなどのCDツール、またはAWS CodeDeployなどのクラウド固有のソリューションを使用してデプロイメントプロセスをオーケストレーションし、自動化します。
  6. テストの自動化: 自動テストをCDパイプラインに含め、デプロイメントの後にアプリケーションの機能を検証します。
  7. モニタリングおよびロールバック: 運用環境で継続的モニタリングを実装し、問題が検出された場合は自動的にロールバックする仕組みをセットアップします。
  8. 通知およびフィードバック: チームメンバーにデプロイメントステータスおよび発生した問題を知らせる通知の仕組みを設定します。
  9. セキュリティ対策: CDプロセスにセキュリティチェックとアクセス制御を実装し、安全でセキュアなデプロイメントを保証します。
  10. 継続的改善: CDパイプラインを継続的にレビューして拡張し、デプロイメントの効率を最適化するとともにソフトウェア品質を維持します。
画像: TestRailはセキュリティおよびコンプライアンス規制準拠するいっぽうで、任意のワークフローと統合可能な柔軟性を保ちながらコンプライアンス要件を満たすのに役立つトレーサビリティ/カバレッジレポートを提供します。

4.品質チェックを実装する

コードの変更がパイプラインで先に進むために満たす必要がある特定の条件を定義することで品質チェックを実装します。そういった品質ゲートは、品質の高いコードだけが先に進めるようにし、欠陥のリスクを減少させ、ソフトウェアの信頼性を維持します。

品質ゲートおよび理由の例:

コードカバレッジしきい値:
テスト成功率:
コンプライアンスチェック:
パフォーマンスベンチマーク

5.通知システムをセットアップする

異なる環境、デバイス、またはブラウザーで複数のテストケースまたはテストスイートを同時に実行する並行テストによってテストプロセスをスピードアップします。このテスト手法はテスト時間を短縮し、より迅速にソフトウェア品質に関するフィードバックを返します。テストの失敗や問題をチームに警告する通知システムを実装し、すばやい対応と解決を可能にします。 

  1. 警告の設定: テストの失敗やビルドの問題の通知をセットアップします。
  2. テスト結果のモニタリング: TestRailなどのツールを使用して結果を追跡します。
画像: 複数のバージョンおよび環境にわたって容易にテスト結果を記録し、添付ファイルを追加し、欠陥レポートを生成します

6.フィードバックループを確立する

効果的なフィードバックループを構成し、開発チームおよび運用チームに常にテストの失敗や運用上の問題を通知します。フィードバックループをセットアップすることで、問題の迅速な識別と解決が可能になります。運用環境でアプリケーションパフォーマンスモニタリングおよびログ分析などの継続的モニタリングツールを使用します。応答時間、リソース使用量、エラー率、セキュリティ脆弱性などにリアルタイムで注意します。

  1. モニタリングツールの実装: New Relicなどのツールを使用してパフォーマンスをモニターします。
  2. 警告のセットアップ: 異常事態や失敗などの警告を設定します。
  3. 定期的なレビュー: フィードバックおよびメトリクスに関する定期的なレビューを計画します。

7.ステージング環境を作成する

運用環境のセットアップを忠実に再現したステージング環境を用意します。ステージング環境を使用してデプロイメントの前に徹底的なテストを行い、アプリケーションが現実的な条件下で期待どおり動作していることを確認します。ステージング環境のセットアップは潜在的な問題がユーザーのもとに届く前に捕捉するのに役立ちます。

  1. 環境のセットアップ: 運用環境をミラーリングするステージング環境を作成します。
  2. テストの実行: デプロイメントの前にステージング環境で徹底したテストを実施します。

8.レポートおよび文書化を行う

詳細なテストレポートおよびテスト文書を生成し、透明性とアカウンタビリティを維持します。テスト結果、コードカバレッジメトリクス、その他関連するデータを含めます。ステークホルダーとレポートを共有し、みなが常にテストの進捗および全体的なソフトウェア品質を知らされているようにします。

画像: TestRailでテスト結果を一元管理し、手動テストおよび自動テストの結果をレポートに集約してテストカバレッジおよびテスト自動化の進捗を可視化します。

9.コラボレーションのカルチャーを促進する

品質に対する共同責任を推進し、自動化と継続的改善を重視するDevOpsのマインドセットを受け入れます。

以下はQAカルチャーを強化し、ソフトウェア開発ライフサイクルとQAをより密接に統合するのに有効な3つの戦略です。

  1. KPIのレビューと更新: チームの重要なKPIを定期的に評価し、進化する目標とプラクティスに合わせて調整します。
  2. 現在のカルチャーの分析: 部門の既存のカルチャーを評価して改善可能な領域を特定し、より協働的な環境を醸成します。
  3. QAの早期統合: 品質保証を開発プロセスの早期に完全に一体化させ、より早く問題を捕捉して全体的な効率を改善します。

コラボレーションに向けた変革は、共同責任、より迅速なフィードバック、ビジネス目標との整合性の改善、継続的学習と改善へのコミットメントの強化につながります。

10.反復と改善

フィードバック、パフォーマンスメトリクス、変化するプロジェクトのニーズに基づいてテスト戦略を定期的に評価および改善します。継続的最適化および効率の改善を目標とし、拡大する要件に歩調を合わせ、全体的な品質を強化します。

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FAQ: DevOpsでの継続的テスト

適切なテスト管理ツールはどのように継続的テストの効果を最大化しますか?

適切なテスト管理ツールは、DevOpsツールとシームレスに統合する強固なプラットフォームを提供し、自動化を支援し、コラボレーションを促進することによって、継続的テスト戦略を大幅に強化します。以下は効果的な継続的テスト戦略の実装に役立つテスト管理ツールが備えるべきキー機能です。

画像: TestRailにはプロジェクトごとのダッシュボードがあり、プロジェクトのテストデータを参照および管理できます。

DevOpsでの継続的テストの主な課題は何ですか?

DevOpsパイプラインで継続的テストを実装することには大きなメリットがありますが、いくつかの課題もあります。DevOpsで一般的な継続的テストの課題には以下のようなものがあります。

DevOpsでの継続的テストのベストプラクティスは何ですか?

画像: TestRailでは、テストケースと外部のユーザーストーリー、要件、ユースケースをリンクすることで、要件、テスト、欠陥のトレーサビリティおよびカバレッジレポートを受け取れます。

継続的テストにおけるテストデータ管理の役割は何ですか?

効果的なテストデータ管理は、DevOpsパイプラインでの継続的テストを成功させるうえできわめて重要です。テストデータ管理には、テストプロセスで使用されるデータを戦略的に扱い、組織化することなどが含まれます。テストデータを適切に管理すると、テストが正確で再利用可能であり、現実の条件を反映していることを保証できます。以下は継続的テストにおける効果的なテストデータ管理の役割です。

(この記事は、開発元Gurock社の Blog 「Continuous Testing in DevOps: A Comprehensive Guide from Strategy to Execution」2024年7月23日の翻訳記事です。)

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