アジャイルプロジェクトでのユーザビリティテストのすすめ

この記事はNishi Grover Gargによるゲスト投稿です。

私が初めてユーザビリティテストを経験したのは、あるアジャイルチームにいたときのことでした。社内にはユーザビリティのエキスパートがいて、アプリケーションの UI 設計を支援するほか、ベータ版でユーザビリティ調査を実施してアプリケーションの使いやすさを評価していました。

ユーザーとの交渉や実施されたセッションに関して言えば、経験は限られたものでしたが、ユーザーから受け取ったフィードバックは、テスト対象のアプリケーションの学習しやすさ、理解しやすさ、魅力などに関して、テスターとしての私にいろいろな新しい道を開いてくれました。

ユーザビリティは時間をかけて格段に進歩してきました。今では、ユーザビリティはWebアプリケーションやモバイルアプリケーションに欠かせない特性です。この記事では、アジャイル開発でのテストというコンテキストにおいて、どのようにユーザビリティテストの必要性を訴求し、実施を簡略化し、意識の向上を図るかについて説明していきます。

ユーザビリティテストとはどのようなものか

ユーザビリティ調査では、ユーザーの代表がアプリケーションを使用しているところを観察します。そこから、ユーザーがどのようにソフトウェアを操作するかについてリアルタイムの気付きとフィードバックが得られます。考察を発展させることで、使用パターンを理解し、新機能をどのように実装するのが最適かを判断できます。

ユーザーに考えを尋ねる代わりに、ユーザビリティ調査によって、ユーザーが実際に何を行うか、ソフトウェアをどのように操作するかを知ることができます。

ユーザビリティ調査の準備

ユーザビリティ調査を実施するなら、できれば製品をすでに使用している顧客ユーザー、あるいは製品の主力顧客として想定されたプロファイルに一致するユーザーを探すべきです。適切な参加者を探すことが重要です。調査終了時に時間を取ってもらったことに対して、謝礼を渡すのもよい考えです。

ユーザビリティ調査を自社内で行うか、社外の場所で行うか、リモートで行うかも決定する必要があります。最も一般的な方法は、望ましい環境を準備し、結果を記録できるよう、参加者に自社のラボに来てもらうことです。しかしときには、適切なユーザーに参加してもらうために、ビデオ会議を通じて遠隔的にユーザビリティ調査を実施する必要があるかもしれません。 最も重要なのは、ユーザーとの日常的な対話です。

ユーザビリティ調査の実施

代表ユーザーにアプリケーションを操作してもらう際、製品で実際に行われる現実的なタスクを課すようにします。紹介やガイダンスは最小限にし、ユーザーがソフトウェアを使用するなかで自力で目的を達成するのに任せます。アナリスト、ビデオ、画面記録ツールやモニターを活用し、ユーザーのクリックやソフトウェアの操作、反応、表情を観察します。黙って観察し、議論すべき点、質問事項、ユーザーが見せた不満などをメモします。

決められた時間が経過したら、ユーザーに質問し、どんなことを感じたか、疑問や懸念について話し合います。簡単な調査票を渡して評価やフィードバックを記入してもらうこともできます。

調査の効果をさらに高めるため、競合製品で同じようなタスクを試してもらい、同じように観察を行って、自社の製品とどのように異なるかを確認するのもよい考えです。

いつユーザビリティテストを行うか

ユーザビリティテストは、プロジェクトの初期段階から念頭に置くべきものであり、したがってテスト計画に含める必要があります。開発の基礎の段階から設計草案、リリース前のアルファ版やベータ版の段階までユーザビリティテストを計画し実施することができます。

スプリントごとに定期的に調査を行うと、実務的な面のほかに、ビジネス上のニーズに対するチームの見方や理解という面でもメリットがあります。

アジャイルチーム全体を巻き込む

アジャイルチームの全員がリリース時の最終的な製品の品質と受け入れに責任を持つため、チーム全体がユーザビリティ調査に関与する必要があります。ユーザビリティラボでユーザーの様子をリアルタイムで観察できる機会を全員に与えるべきです。音声やユーザーマシンのデスクトップ画像の共有を通じて別室からセッションを観察できるようにするのもよいでしょう。

チームにとっては、自分たちが多大な時間と努力を費やしたアプリケーションが実際にどのように使用されるかを見ることができ、生きた学習の経験になるでしょう。開発者はユーザーの実地の苦労を理解し、テスターは新しいユーザーシナリオやユースケースを思いつき、プロダクトオーナーはユーザー本位の機能のアイデアを得るでしょう。

このようにユーザビリティ調査を実施しながら何回かのスプリントを繰り返すうちに、製品の学習しやすさ、理解しやすさ、使いやすさについてチームがまったく新しい概念と観点を得たことがわかるでしょう。ユーザーにとって何が本当の課題であるかを理解しているため、ほとんど意見が分かれる余地もなく、課題に優先順位を付けるのも容易です。たいていの場合に、すみやかに合意が形成され、重要な問題を期日までに修正できるでしょう。

ユーザビリティテストの利益を現実化する

私たちはいつも、アジャイルチームはもっと顧客を重視しなければならないと言ってはいないでしょうか?テスターにもっとユーザーシナリオや新しいビジネスフローを考えてテストするよう求めてはいないでしょうか?ユーザーの本当の課題を知りたい、さらには課題が発生する前に解決できたらと考えてはいないでしょうか?ユーザビリティテストは、これらの要求すべてに対する答えです。

どんな ROI 報告書や損益計算書よりも、ユーザビリティテストは顧客の効率改善とアジャイルチームの従業員満足度の向上に役立ちます。ユーザーの要望や好みを推測するのではなく、ユーザーの反応やつまずきを直接的に知ることで、よりよい視点を得ることができ、最終的には開発コストの削減や収益の増大につながります。

あなたのチームがユーザビリティテストを始める際、この記事で紹介したヒントが役に立つことを願っています。

Nishiは2008年からテストおよびアジャイルのコンサルティングトレーナーを務めており、ソフトウェアテストライフサイクルのあらゆる局面での実務経験があります。NishiはAgile Testing Alliance(ATA)でさまざまなコースの講師を務め、トレーニングを提供し、テストに関するコミュニティイベントやミートアップを主催するほか、多数のテストイベントやカンファレンスのスピーカーとして登壇しています。アジャイルおよびテスト分野での最近のトピックを取り上げた Nishiのブログをご覧ください。

(この記事は、開発元Gurock社の Blog 「Making the Case for Usability Testing in Agile Projects」2019年1月15日の翻訳記事です。)

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