TestRail活用術:参照のカバレッジレポートを使ったテストカバレッジの把握

参照のカバレッジレポートを使ったテストカバレッジの把握

テスト管理ツール「TestRail」にはレポート機能が搭載されており、あらかじめ用意されているレポートテンプレートでレポートの出力、スケジューリング、共有、および電子メール送信ができます。

本記事では、要件とテストケースの紐づけができる「参照のカバレッジレポート」の利用シーンと作成方法をご紹介します。

参照のカバレッジレポートとは

「参照のカバレッジレポート」は、要件管理ツール上の要件とTestRail上のテストケースの対応関係を表示するレポートです。要件管理ツールのチケット番号をTestRailでは「参照」として管理します。このレポートを確認することで、要件のテストケースカバー率を素早く確認できるなどさまざまなメリットがあります。

レポートの利用シーンと出力内容、出力方法を説明していきます。

TestRail製品ページ

利用シーンと出力されるレポート

「参照のカバレッジレポート」は、プロジェクトの全要件が適切にテストケースでカバーされているか確認したい時や、どの要件がどのテストケースでカバーされているかを確認したい時に利用します。下の図のようなレポートを出力できます。(※こちらからレポートのPDFを参照できます。)

参照カバレッジレポート

円グラフでは、選択した参照(要件)の内、何件がテストケースでカバーされていて(水色)、何件がカバーされていないのか(黒色)が表示されます。上の図の例では、37件がカバーされていて、164件がカバーされていないため、要件のテストケースカバー率が低いことがわかります。

棒グラフでは、選択した参照の数、参照があるテストケースの数、参照がないテストケースの数が表示されます。上の図の例では、201件の参照があり、参照に紐づく77件のテストケースがあり、参照に紐づかない154件のテストケースがあることがわかります。

さらに、下の図のように「参照」の箇所では、各参照にどのテストケースが紐づいているのかをカバレッジマトリクスで確認できます。

参照のカバレッジレポート

例えば、参照#1は「C88」のテストケースに紐づいている一方、参照#2は「テストケースはありません」と表示されているため、要件に紐づくテストケースがないことがわかります。

各参照のIDは要件管理ツールの要件の詳細画面へ、各テストケースのIDとタイトルはテストケースの詳細画面へのリンクになっているため、リンク先で参照の詳細を確認できます。リンク先で参照の詳細を確認するには、参照の統合設定で「参照URL」を設定しておく必要があります。詳しくはこちらをご参照ください。

参照のカバレッジレポートを利用するメリット

参照のカバレッジレポートは、以下のようにプロジェクトのさまざまな関係者にとって有益です。

  • プロジェクトマネージャー(PM)
    プロジェクトの全要件が適切にカバーされているか確認できるため、品質の確保とリスク管理がしやすくなります。例えば、カバレッジが低い場合は、追加のテストが必要であることを早期に把握でき、それに伴うリソースやスケジュールの調整が必要と判断できます。一方、カバレッジが高い場合は、品質リスクが低いと判断し、プロジェクトの計画を大きく変更せずに進行できそうと判断できます。
  • テストマネージャー、テストチームのリーダー
    要件に対するテストケースのカバレッジを評価することで、テスト計画の調整やリソース配分を適切に行うための判断材料になります。例えば、要件に対してケースのカバレッジが低い場合は、テストケースが足りないのでテストケースの作成などに追加で時間や工数がかかると予測できます。一方、要件に対してケースのカバレッジが高い場合は、現状のテスト計画の大幅な修正は不要と判断できます。
  • 開発チーム
    要件とテストケースの対応関係を明確にすることで、要件の変更や新たな要件追加に対するテストケースの作成などの対応が迅速にできます。例えば、開発中に新しい要件が追加された場合、その要件に対するテストケースがすでに存在するかどうかをすぐに確認できます。存在しない場合は、迅速にテストケースを作成することで、スムーズな開発に繋がります。
  • 品質保証(QA)チーム
    カバレッジのギャップを特定し、未カバーの要件に対するテストケースの作成や既存テストケースの補完を行うことで、製品の品質向上に貢献します。例えば、カバレッジが低い要件を発見した場合、その要件に対して重点的にテストケースを追加することで、テストの網羅性を高め、潜在的な不具合を発見しやすくなります。これにより、製品の品質を高めることができます。

レポートの出力方法

1.該当プロジェクトの「レポート」画面の右下にある、「ケース」の「参照のカバレッジ」をクリック

TestRailのレポート画面

2.レポートの名前、説明の設定

TestRailのレポート作成画面
  • 名前
    • デフォルトで「参照のカバレッジ(ケース)」の文字列と変数(%data%)を使った今日の日付が入ります。必要に応じて変更します。
  • 説明
    • 必要に応じてレポートの内容が分かるような説明を記入します。空のままでも問題ありません。

3.レポートオプションの設定

オプションは2つのタブに分かれています。まずは「参照」のタブで、集計に含める参照を選択します。

TestRailのレポート作成画面
  • すべての参照
    • TestRailに入力されたすべての参照をレポートに含めます。
    • 参照カバレッジは必ず100%になります。
  • 次の参照のみ
    • 特定の参照のみを集計します。レポートに含める要件管理ツールのチケットなどのIDを追加します。上の図のように1行に1つのIDを入力します。
    • すべての要件をテストケースでカバーできているかを確認したい時はこちらを選択し、要件管理ツールから取り出したすべての要件のIDを入力します。
    • 特定の要件に紐づいたテストケースを確認したい時もこちらを選択します。

次に、「テストスイート」タブで、レポートで集計するテストスイートを選択します。

TestRailのレポート作成画面
  • すべてのテストスイート
    • すべてのテストスイートのテストケースが含まれます。
  • 次のテストスイートのみ
    • 選択されたテストスイートのテストケースのみをレポートの集計対象にします。

最後に、「テストケース」タブで、テーブルに表示するテストケースに関する設定を追加します。

TestRailのレポート作成画面
  • 次のテストスイートを含める
    • 基本的には「参照があるテストケース」と「参照がないテストケース」の両方にチェックを入れます。参照がないテストケースを除きたい場合等は必要に応じてチェックを外します。
  • 次の列を含める
    • テストの情報を示すテーブルに含める列を選択します。デフォルトの列には ID とタイトルが含まれます。表示したい情報に応じて、(テスト) タイプ、優先度などの列を追加できます。

4.「アクセスとスケジュール」を設定し、「レポートの追加」をクリック

アクセスとスケジュールの設定の詳細については、マニュアルをご確認ください。設定が完了したら、「レポートの追加」ボタンをクリックするとレポートを出力できます。

まとめ

TestRailの参照のカバレッジレポートについてご紹介しました。テンプレートを使って作成することで、要件管理ツール上の要件とTestRail上のテストケースの関連を簡単に可視化できます。運用にあわせて是非ご利用ください。

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